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記事サマリー
株式会社ミルボンは、プレミアムブランド導入サロンが出店するプラットフォーム型ECサイト「milbon:iD」を運営しています。milbon:iDでは、美容室でのカウンセリングを起点として、そのお客様がオンラインでも同じ美容室から商品購入できる仕組みを提供。美容室店頭での購入に加えてオンライン購入も可能にした独自のBtoBtoCモデルを展開しています。
運営を進める中で、メール到達率の低下と、サロンごとに取扱商品が異なるBtoBtoCモデル特有の課題が浮上。これらを解決するため、LINE公式アカウントとMAACを導入を決めました。流入経路に基づく精緻なセグメント配信やGA4連携によるカゴ落ちアプローチ、サロン発行クーポンのLINE配信機能などを活用し、顧客接点の強化を開始。オンラインからオフラインへの送客を促進し、美容業界における新たなBtoBtoCマーケティングの形を確立しています。
はじめに:メルマガの6割しか届かない時代の、新たな顧客接点戦略
株式会社ミルボンは、美容室向けヘアケア製品および化粧品のリーディングカンパニーとして、美容室専売品の開発・販売を展開しています。同社のBtoC領域では、多くの企業と同様に、デジタルマーケティングにおいて「メール到達率の低下による顧客接点の危機」という課題を抱えていました。
この課題への対応策として導入されたのが、LINEマーケティング最適化CRMツール「MAAC」です。MAACとの出会いをきっかけにエンドユーザー向けのLINE公式アカウントも導入。MAACとLINE公式アカウントの導入がミルボンのLINE戦略にどのような変化をもたらし、具体的なサービス構築となったのか、その詳細をミルボンが運営するECプラットフォーム、milbon:iDご担当の宮城愛実様と西田洋介様(以下敬称略)にお伺いしました。
※BtoB向けLINE活用については、前編をご覧ください。
課題:メール到達率低下と美容室別ブランド管理の複雑さ
milbon:iDが直面していた課題は、美容業界特有のものと、現代のデジタルマーケティング全般に共通するものの両方が含まれていました。
メール到達率の急激な低下
従来、milbon:iDではメールを主要な顧客接点として活用していましたが、昨年以降に大きな問題に直面していました。
- Gmailのロジック変更により一斉配信メールが迷惑メール扱いされ、届かないケースが増加
- 会員の約50%がメール受信設定をオフに設定
- 結果として、以前は高い開封率を誇っていたメールが「受信許諾顧客の6割程度にしか届かない」状況に
「もともとメール(メルマガ)が主な顧客接点でしたが、受信許諾をいただいている顧客が全会員の約半数という状況で、さらに昨年以降Gmailのロジック変更などにより一斉配信メールが迷惑メール扱いされる傾向が強まりました。迷惑メールへの隔離が強化されることで、リーチできる顧客がどんどん減少していることに危機感を抱いていました。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
美容室とエンドユーザーをつなぐ難しさ
milbon:iDは一般的なECサイトとは異なる独特な仕組みを持っています。お客様は必ず美容室でのカウンセリングを経て会員登録し、その美容室に紐づいた状態でオンライン購入を行います。つまり、お客様が購入する商品は、通っている美容室の取り扱いブランドとイコールであり、購入履歴なども美容室と共有される仕組みです。
このような独特な仕組みゆえに、milbon:iDのビジネスモデルには特有の複雑さがありました:
- 美容室ごとに取扱いブランドが異なる:同じミルボン製品でも、「Aujua(オージュア)」「LASSICAL」など各美容室が取り扱うブランドは異なります
- 正確な情報配信の重要性:美容室が推奨していないブランド情報を顧客に送ることで、信頼関係を損なう可能性がある
- オンラインとオフラインの連携:トライアルキット購入者をいかにして美容室へ送客するかという課題
「milbon:iDでは、美容室ごとに取り扱うブランドが異なるため、「誰に・どのブランド情報を送るか」が非常に重要なポイントです。間違って別ブランドの案内を送ると、美容室様との信頼関係に支障をきたしてしまう可能性もあります。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
このような状況の中で、顧客接点の新たな柱を構築し、美容室とエンドユーザーをつなぐ架け橋としての役割を果たすためのソリューションが求められていました。
MAACが実現した4つの改善と具体的な成果
そこで導入されたMAACは、ミルボンのデジタルマーケティング戦略を大きく前進させました。ここでは、主な4つの取り組みと、それによって得られた成果をご紹介します。
1. データに基づく精緻なセグメント配信の実現
milbon:iDでは「ユーザーが通っている美容室のブランド情報をいかに正しくとどけるか」が最重要課題のひとつでした。MAAC 導入で実現したのは、次のようなきめ細かなセグメント配信です。
- 流入経路ベースの自動タグ付け
- ID 連携がなくても、友だち登録元からユーザーの購入可能ブランドを判別
- 「Aujua」「LASSICAL」など ブランド/商品別タグ を組み合わせ、誤配信リスクを低減
- 美容室別ブランド管理との完全整合
- 取扱ブランドが美容室ごとに異なるという業界特性に合わせ、美容室が推奨しないブランド情報は配信しないルールを徹底
- 間違ったブランド案内が “別美容室への乗り換え” を誘発するリスクを防止
「milbon:iDは美容室が出店するプラットフォームなので、各店舗で扱うブランドがバラバラです。例えばオージュアのプロモーション情報を配信したい場合に、無差別に送ってしまうと美容室の信頼を壊しかねません。MAACを導入することで流入経路だけでタグ付けでき、ID連携前のお客様でも“どのブランドが購入できるか”を把握することが可能です。MAACとの連携は『主役は美容室』という前提で、高い確度の情報を届ける、という点を可能にしてくれます。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
このしくみにより、美容室が推奨するブランド情報だけをエンドユーザーにパーソナライズ配信できる体制を構築。ユーザーの嗜好や購入履歴を加味した情報提供が可能になり、不一致配信によるブランド離脱リスクを最小化しています。
2. GA4連携によるカゴ落ちユーザーへのアプローチ強化
MAACとGA4の連携により、ID連携していなくても「かご落ち」したユーザーにLINEでリマインド配信が可能になりました。
- ID連携なしでもリターゲティング可能
- ECサイトでカートに商品を入れたものの購入に至らなかったユーザーに対し自動的にフォローアップ
- 高いコンバージョン率を見込める
「GA4連携で一番助かっているのは、ID連携しなくてもかご落ち配信できるところです。かご落ち配信機能はメールで実施していた時から特にコンバージョン率が高く、効果的な施策のため広く会員様に向けて必ず実現したかった配信です。誰かがわからないと追跡できないことが多いなか、リーチできるのは大きいと考えます。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
今後はさらに設定チューニングをして、ブランドをまたがない情報設計を徹底していく方針です。
3. 美容室発行クーポンのLINE配信による架け橋機能の構築
さらに業界でも数少ない機能としてミルボンから高く評価されているのが、美容室発行のクーポンをLINEで配信できる点です。
- 美容室とエンドユーザーの自然な接点を創出
- API経由で美容室発行クーポンをLINEに配信
- 「メーカーからの情報」ではなく「美容室からの発信」として届けられる
「MAACとの連携によって、サロン様がサイトの管理画面で発行したクーポン情報がLINEで配信可能となる点はとても大きいです。ミルボンから配信する情報とともにサロン様の情報を直接届けたい、という想いが強かったため、他サービスからAPIでプッシュ通知できるMAACの機能は非常に魅力でした。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
この機能により、milbon:iDが目指す「美容室とエンドユーザーをつなぐ架け橋」としての役割を効果的に果たすことが可能になります。美容室にとっても、自社の顧客へ直接アプローチできる価値あるチャネルとして高く評価されています。
4. オンラインからオフラインへ(O2O)の送客促進
milbon:iDでは、トライアルキット購入者など、美容室とまだつながっていないユーザーをいかにして美容室に送客するかという課題にも取り組んでいます。
- 店舗近隣レコメンド(ストア位置検索)機能の活用
- トライアルキット購入者に「近くの取扱店舗」を案内
- オンラインからオフラインへの送客を実現
「こちらはサービス設計中の段階ですが、ぜひMAACを活用して近隣店舗のご紹介ができたらいいな、と考えています。 トライアルキットの購入のみであれば美容室登録が不要なため、まだサロンとつながっていないお客様にLINEで「近くの取扱店舗はこちら」と案内し、美容室の顧客になっていただき、継続して商品をお使いいただけるように導くことを狙っています。また、本会員移行時にタグを削除するロジックも検討しており、より一貫した顧客体験の設計を進めています。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
この施策により、オンラインでの一時的な購入にとどまらず、美容室との継続的な関係構築を促進し、顧客のLTV(顧客生涯価値)向上につなげることを目指しています。
今後の展望:AIを活用したパーソナライズ配信の強化
ミルボンでは、これからMAACの活用範囲をさらに広げ、LINEマーケティングの効果を高めていく計画です。
AIスマート配信・AIレコメンド機能の活用
- 一人ひとりに最適なタイミングと内容での情報提供を実現
- ブランド別の購買傾向を分析し、クロスセル提案を自動化
トライアルユーザーの育成強化
- 本会員移行時の適切なタグ管理による一貫した顧客体験の提供
ID連携率の向上
- まずは有効会員の1割にあたる10万人のID連携を目標
- リッチメニューやPOPなどでID連携を促進中
「目標としては、まずは有効会員の1割にあたる10万人のID連携を目指しています。リッチメニューやPOPなどでID連携を促進中です。」(ミルボン宮城氏・西田氏)
これらの施策により、メールに代わる強固な顧客接点の構築と、美容室とエンドユーザーをより効果的につなぐ仕組みの実現を目指しています。
最後に:ミルボン事例が示す、BtoBtoCビジネスにおけるMAACの戦略的価値
milbon:iDのto C事例は、MAACが単なるLINEのMAツールに留まらず、複雑なBtoBtoCビジネスの根幹を支える戦略的プラットフォームになり得ることを示しています。本事例から見えたMAACの提供価値は、大きく3つに集約されます。:
1.「企業」「美容室」「顧客」の三方よしを実現するコミュニケーション設計:
MAACは、美容室ごとに異なるブランド情報をエンドユーザーに正確に届けるセグメント配信や、美容室が主体となって発行できるクーポン機能を提供します。これにより、顧客は自分に合った情報を得られ、美容室は販促機会を創出でき、ミルボン本体はブランド全体の体験価値を高めるという、「三方よし」の理想的な関係性をLINE上で構築しています。
2.「メール依存」から脱却し、新たな顧客接点を確立する実行力:
本事例の出発点であった「メールが届かない」という課題に対し、MAACはLINEという確実なチャネルを提供。さらに、GA4連携によるカゴ落ちアプローチなど、顧客の行動に基づいたタイムリーなコミュニケーションを実現し、メールに代わる新たな顧客接点の柱として確実に機能しています。
3. "ID未連携"ユーザーも逃さない、機会損失の最小化:
ECサイトにおいて大きな課題となる「ID連携前の匿名ユーザー」に対しても、MAACは流入経路タグやGA4連携によってアプローチを可能にします。これにより、貴重な見込み顧客を逃すことなく関係を構築し、将来のLTV向上へと繋げる基盤を整えています。
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ミルボンのように、販売パートナーとの連携が不可欠なBtoBtoC事業において、顧客接点の最適化と売上向上を目指す企業の皆様にとって、MAACは強力な武器となるはずです。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
[Crescendo Lab・MAAC資料ダウンロードはこちら]
▼ 株式会社ミルボンについて
美容室向けヘアケア製品および化粧品のリーディングカンパニーとして、美容室専売品の開発・販売を展開。「美容室とエンドユーザーをつなぐ架け橋」としての役割を担い、「Aujua(オージュア)」「LASSICAL」などの多様なブランドを展開しています。ECサイト「milbon:iD」では、美容室が出店するプラットフォームとして、美容室とエンドユーザーの関係を深めるビジネスモデルを構築しています。
▼ MAAC(マーク)とは
クレッシェンド・ラボが開発・提供する、AIを活用したLINEマーケティングCRM(顧客関係管理)・MA(マーケティングオートメーション)ツールです。LINE公式アカウントの友だち獲得から顧客育成、コンバージョン促進までを支援します。

Kokoro Tomita
JP Content Writer, Crescendo Lab, Taiwan