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【プロに学ぶ】LINE公式アカウント運用成功のカギ #5

インタビュー • 2023/09/08 22:00:00 • Written by: ayumicreslab

「データ」と「テクノロジー」をかけ合わせマーケティングソリューションを提供する株式会社マイクロアド(以下「マイクロアド」)。今回は、海外事業本部グローバルビジネスセンター統括 堀内隼太さん(以下敬称略)に、日系企業の台湾進出事情や、台湾でのLINE公式アカウント運用に役立つアドバイスをクレッシェンドラボ日本支社統括・猪股唯耶が伺いました。

1. 拠点を日本から中国、そして台湾へ

── 堀内さんのご経歴をざっくり教えてください。

堀内:ありがとうございます。2013年に繊維専門商社に新卒入社、そこで2年間ほど営業として従事しておりました。日本のアパレルブランドの製品を海外で生産し日本に輸入して納品する仕事を行っていました。

現職のマイクロアドには、知人の紹介を受けて2015年に入社をしました。まずは大阪支社に所配属となり、1年半ほど広告営業を担当、その後人事部に異動し、約1年間、新卒中途採用や社内人事企画を担当。2017年4月に中国現地法人であるMicroAd China(上海)に出向。

中国では現地に進出している日系企業様のプロモーションや中国向けの訪日インバウンドプロモーションを主に担当。2019年からは台湾に拠点を移し、MicroAd Taiwanの業務も兼任。中華圏の営業統括を担当する形となりました。

堀内:当初はまだ台湾法人の規模も30名弱程度でしたが、コロナの影響もあり台湾国内のEC事業や越境ECが伸び、その広告ニーズに応えるために採用を強化。私が日本に戻ってきた2022年2月頃には約80名ほどの組織規模になっていました。

日本に戻り、海外事業本部の中にグローバルビジネスセンターを設立し、その事業責任者を担当しております。

コロナ明けにインバウンドの市場が戻ってくることは確実でしたので、インバウンドプロモーション向けのサービス拡充や、中華圏以外への展開強化、海外進出を考える日本企業様のより近くで支援させていただくことなど、日本にいるからこそできる海外向けの仕事があると考え、日本に拠点を移しました。

── インバウンドとアウトバウンドの割合は、今はどのくらいなのですか。

堀内:現状だけで見ると現地プロモーションや越境EC(アウトバウンド)の方が割合としては多くなります。ただ、直近は圧倒的にインバウンドマーケティングに関するご相談が多くなっています。

インバウンドで言うとこれまでは訪日旅行客の方々がお買い物をされるようなリテール企業様がプロモーションが多かったのですが、直近ですと消費財メーカー様やコスメブランド様などからインバウンドプロモーションに関するご相談をいただくケースが多くなっております。

── 今後の御社の展望について教えてください。

堀内:マイクロアドは設立から15年ほどの会社なのですが、会社設立の翌年には海外に拠点を設立し、海外事業を展開しております。その国々によって市場や状況も変わり、紆余曲折がございましたが、中華圏を軸にようやく安定した基盤を構築することができました。

日本の企業の海外進出に関しては、まだまだ成功事例が多くある訳ではないので、海外市場において成功する割合をどう増やしていけるか、日本の企業様を海外で成功させるきっかけを作り続けることが弊社のミッションであると考えています。

── 御社のお客様層はどのような感じなのでしょうか。

堀内:業界は多岐にわたっています。コスメから生活用品、アパレル、小売、さらにマーケティングツールなどを扱うBtoBのお客様もいらっしゃいます。

2. 日系企業の台湾進出事情

── 日系企業による台湾進出の成功事例などはありますか。

堀内:数年前に、台湾向けに越境ECを展開されているアパレル企業様から、オンライン上のコミュニケーションだけではなかなかブランドのファンを増やすことができず、売上が伸び悩んでいるというご相談をいただきました。

そこで弊社が現状把握のための調査を行なった上で、「一度台湾でもオフラインでチャレンジしてみませんか?」というご提案をさせていただき、ポップアップという形で台湾に期間限定ショップを出すことになりました。

そこでインフルエンサーに1日店長を勤めてもらうなどのプロモーション企画を行い、新たな会員数も大幅に増加、そのショップ単体でも売上に貢献する結果となりました。これをきっかけとしてこちらの企業様は台湾で法人化もされていて、現在は現地に店舗も構えられております。

台湾で法人を設立するのは法律や言語、雇用条件など日本と異なる部分が多いため容易なことではありませんが、越境ECの場合だと輸出入経費がかかるので、売上が伸びても利益が追いついてこない、というジレンマがあります。

弊社では単純なプロモーション支援というよりかは、長期の戦略を立てる部分から一緒に入らせていただき、デジタルマーケティングを軸にコンサルティングさせていただきます。

さらに、台湾で1つしっかりと海外での成功事例を作り、次は香港、中国と言うように、領域を広げられる部分に関してもしっかりと支援させていただける体制をご用意しております。

マイクロアドでは過去に最大で12ほどの海外拠点を持っていたことがあるのですが、現在現地法人という形で残っているのは数カ国ほどになります。実際に私たちも海外で経営を経験し、その難しさを理解しているので、海外進出しやすい地域や国などに関する情報を提供させていただくことが可能です。

── 日本と台湾の消費者は、性質が大きく異なるのでしょうか?

堀内:台湾の若年層の流行りに関していうと、日本とあまり違いがなくなってきているなという印象です。

台湾現地では日本のブランドやコンテンツの人気も根強いですが、直近は韓国コンテンツや韓国コスメの人気が高くなってきているため、台湾やタイも韓国寄りになってきていると言われています。この部分に関しては弊社もキャッチアップし、日々情報をアップデートしているところではあります。

3. 多様化する台湾のLINE公式アカウント利用

── 台湾でのLINE公式アカウント活用のご経験、業務内容や事例などを教えていただけますか。

堀内:現在弊社では台湾市場向けにはLINE、Facebook、Instagramなど現地で使われているSNSを中心にCRM施策をご提案させていただいています。

現状は台湾に進出されている多くの日系企業様が自社会員データをうまく活用しきれていない状態です。

例えば、あるリテール企業様のお話で、台湾国内でも自社会員が数十万人いるという場合でも、すべてが自社店舗というわけではなかったり、コミュニケーションの取り方が店舗ごとにばらけてしまっていたりと、会員データの活用に課題感をある状態でした。

従来は既存の自社会員に対して店舗に来てもらった時にしかアプローチができなかったのですが、LINEを活用したCRMを導入することで、LINEと元々の自社会員情報をマッピングし、LINE上で自社会員を統一管理し、ユーザーの居住エリアごとに情報を出し分け、効率的にコミュニケーションを取ることに成功しました。

── 元々あるお店の決済情報などを、LINEと連携させた、ということでしょうか。

堀内:はい。さらにLINEとつなげることで、企業様がよりパーソナライズした情報をユーザーにできるようになるというのが最も大事なポイントで、広告とは異なり各ユーザーにコンテンツをダイレクトにお届けできる点は、企業様にとってかなり大きなメリットであるといえます。

堀内:また、台湾市場においては日本と比べてもLINEの依存度が高く、例えばキャッシュレスの決済だと日本ではPayPayなどが主流ですが、台湾だとLINE PAYの利用率がダントツで高いです。

台湾企業の導入事例でいうと、銀行や投資関連、不動産会社などがLINE公式アカウントを軸にしたCRM施策を行っているケースも多く、アンケートなどを通してユーザー情報を蓄積し、ユーザーごとに情報を出し分けて配信するシーンを多く見かけます

企業がLINEを活用するという点においては日本より浸透している印象を受けます。

── LINE公式アカウントの運営に関して、どのような相談が多いですか。

堀内:ケースバイケースです。欧米系の通販企業様の公式アカウントを台湾向けに運用させていただいているのですが、こちらは目標設定からコミュニケーション設計、ユーザーのカテゴライズまで全てお任せいただいております。

日系企業様ですと、企業側のマーケティングチームでしっかり考えられてからご相談いただくケースもあり、LINEをCRMの軸とした際のコンテンツ内容や施策などを中心にご提案させていただくことが多いです。

── コミュニケーションやコンテンツをどんなに考えて工夫しても、一方的な配信は飽きられてしまいますよね。これに関して対策などはありますか。

堀内:まさしく、飽きられないコンテンツを作り続けることはとても大事なことで、一方的なコミュニケーションではブランドロイヤルティを高めることはできません。

機械的なメッセージが頻繁に送られてきたり、頻度は高くなくても不要な情報が送られてくると、正直めんどくさいなと思いますよね。せっかくLINEを活用していても、ブランドロイヤルティを下げてしまっては非常にもったいないですよね。

そこで、我々はクレッシェンドラボ社が提供しているエンゲージメントを上げるためのゲームツールを導入したり、ユーザーが本当に必要だと感じるような情報やクーポンを配信することで、繋がっていたいとユーザーに思わせることが大事だと考えています。

4. 台湾進出を考える企業へアドバイス

── 最後に、台湾進出を考えている企業へ向けて、LINEでCRMを回していく際のアドバイスや注意事項を教えてください。

堀内:広告やオンラインのみの施策だと少なからずブランドロイヤリティが低いユーザーも多くなってしまいます。これは効率的な配信の妨げになったり、すぐにブロックに繋がる恐れがあるので、新規ユーザーの獲得には様々な配慮が必要です。

ブロックや炎上を恐れて全く配信をしない、という企業様も中にはいらっしゃいますが、このような極端な手段を取るのではなく、分析に基づいたより適切な配信を行い、ユーザーに寄り添い徐々にロイヤルティを高めることをお勧めします。

例えば台湾は”お得感”や”コスパ”が非常に重要視される市場です。店舗やオンラインを問わず「買一送一」という一つ購入したらもう一つプレゼント、と言う意味のキャンペーンが頻繁に実施されます。友達紹介キャンペーンや共同購入キャンペーンなども非常に多く、日本よりもこの点を重視したコンテンツ作りやキャンペーン設計が有用となります。

上記の点で言うと台湾ならではの要素も強いのですが、ただ一方で、ブランドのコンセプトやあり方をブランド社内の担当者様が考えながら自分ゴトとして実行していくことが重要で、SNS運営にしても、内製できることは内製すべきであると考えています。

立ち上がり期やデータ分析やクリエイティブ制作などのスキルが伴うものはノウハウやリソースを持つ広告代理店に依頼すべきかと思いますが、方向性や戦略に関する議論は、最終的には自社で行うべきであると考えます。

日本企業が海外に進出される際にここを完全にお任せしてしまうケースが多く、数年単位で見た時にうまく全体でPDCAが回っていないケースが多いです。

そのため、弊社では企業様とお取引させていただく際にパートナーという形でお取り組みさせていただき、企業様と一緒に体制を組みPDCAを回せる体制を構築します。

本日は、日系企業の台湾進出の成功事例や台湾消費者の性質などについてお話ししました。台湾でのビジネスやLINEを活用したCRMに関心をお持ちの皆様にとって、お役に立つことがあれば幸いです。

ありがとうございました。

 

■株式会社マイクロアドについて
「データ」と「テクノロジー」をかけ合わせたマーケティングソリューションを提供するマーケティング会社。消費者のデータを分析して顧客のマーケティング課題を解決するデータソリューションサービス「UNIVERSE」や、日本国内外における企業の総合的なマーケティング課題解決を支援するコンサルティングサービス、デジタルサイネージのオンライン管理をサポートするサービスなど、事業は多岐に渡っている。
公式サイト:https://www.microad.co.jp/

 

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