「医療AIカンパニー」として薬局やドラッグストア向けのデジタル化支援事業を展開されている株式会社MG-DX。今回は、営業本部コンサルグループの廣瀬恭平さん、吉野七海さん(以下敬称略)に、LINE公式アカウント運用に関する事例や薬局・ドラッグストアにおけるLINE運用のコツなどをクレッシェンドラボの日本支社統括・猪股唯耶が伺いました。
1. MG-DX設立の背景と今後の展望
── まずは自己紹介をお願いします。
廣瀬:株式会社MG-DXの営業本部コンサルグループの廣瀬と申します。薬剤師免許を持っており、薬剤師の視点から施策に携わっております。よろしくお願いします。
吉野:株式会社MG-DXの営業本部コンサルグループの吉野と申します。新卒でMR(Medical Representative:医薬情報担当者)として2年間従事しておりました。2021年よりサイバーエージェントへ中途入社し、インターネット広告事業本部で広告運用コンサルを経験後、昨年4月からMG-DXでコンサルとして業務にあたっています。よろしくお願いします。
── 現在のMG-DXのサービス領域を教えてください。
吉野:「薬急便(やっきゅうびん)」 というオンライン診療やオンライン服薬指導システムなどのサービス提供と、病院/薬局DXのコンサルティング事業を展開しております。「薬急便」 は、調剤DXに必要な機能を全て兼ね備えたオンライン調剤サービスとなっております。
── 御社の主要サービス「薬急便」 を始められたきっかけを教えてください。
吉野:株式会社サイバーエージェントとしての小売DX支援事業の強化が背景としてあります。物販と調剤の両軸を持つドラッグストア支援を活性化させるべく、調剤領域に特化した株式会社MG-DXが設立されました。これまで小売DXにおいて、物販側の支援に関するサービスや知見はありましたが、調剤領域は網羅できていなかったため、株式会社MG-DXはそこをカバーするために設立されました。
市況的にも、コロナ禍における時限的・特例的措置として厚生労働省から発出された「0410対応」 や、2020年9月1日に施行された改正医薬品医療機器等法により、オンライン服薬指導の導入への注目が高まる中、2020年10月21日には「0410対応」 の実績を踏まえて運用ルールを見直す方針が示されるなど、医療現場におけるオンライン化が拡大したことも理由のひとつです。
廣瀬:このような背景のもと、薬局・ドラッグストアに訪れる必要なく患者が指定する場所に処方薬の配送を実現する配達サービスとして「薬急便」 が開始されました。オンライン服薬指導の後に、最短で当日中に指定場所への処方薬配送が可能なため、受診者はオンライン服薬指導の受診から処方薬の受け取りまでを、仕事や家事・育児などの隙間時間を利用し、場所を選ばずスムーズに行えるようになります。最短で受診当日から処方薬の服用が可能です。
── 今後の、ご自身またはMG-DXとしての展望を教えてください。
廣瀬:デジタルを起点とした売上拡大を支援していきたいと考えています。顧客データを活用したCRM施策や自社販促はもちろんのこと、新たな収益の柱となる広告事業の共創パートナーとして、調剤を起点としたデータ基盤の構築から、購買データを活用したデータ配信事業のプロダクト設計からグロースまで、幅広い領域での支援を目指しています。
2. オンライン調剤サービスのLINE活用事例
── 今回は、LINEというプラットフォームの活用について深掘りさせていただきます。まずは、御社がLINEを事業に導入された背景を教えてください。
吉野:先ほどお伝えした内容にも付随するのですが、株式会社サイバーエージェントとして持っている広告や販促の知見を踏まえ、LINEが有効だと判断いたしました。ドラッグストアには物販事業と調剤事業の2つの軸がありますが、物販側の販促施策として、多くの小売店がLINEを活用しています。そのため、調剤事業を展開するにあたり、LINEという既存の接点を活用しない手はないと考えました。
LINE活用の具体的な事例として、処方せんの事前受付やオンライン服薬指導・お薬手帳などの調剤サービスを組み込んだ薬局特化型のLINEミニアプリをドラッグストアや調剤薬局に提供しています。
── なるほど。LINE公式アカウントではなくLINEミニアプリ活用に至ったのはどのような経緯からでしょうか?
吉野:まず、普段から使い慣れたLINE上で利用できるため、新規ダウンロードが必要なアプリと比べて初回利用のハードルが低く、導入直後から多くの利用が期待できるという点は、LINEミニアプリならではの強みだと考えます。また、LINEミニアプリ利用時にはLINE公式アカウントと連携されている必要があるため、必然的に友だち追加につながり、自社の資産としてLINE上に独自の顧客接点を作ることができます。さらに、予約情報や服薬フォローアップなどの重要な連絡をLINEで届けられるため、1つのアプリでコミュニケーションを完結させられる点や、それがアカウントの活性化・ブロック率の低減につながる点も利点だと考えています。
── LINEミニアプリの活用によって、LINE公式アカウントの友だち獲得数などに変化はございましたか?
廣瀬:とあるお客様の事例ですと、調剤領域において処方せん獲得枚数の伸び率、来局回数 に効果が見られています。処方せん獲得枚数の伸び率 に関しては、ダウンロードが必要なアプリ型調剤サービスからLINEミニアプリへの切り替え後、1.7倍に伸長しております。来局回数 については、LINEユーザーにおける「2回以上の来局回数」が非LINEユーザー対比で163%へと増加する結果が得られています。
また、弊社が提供している「薬急便モバイルオーダー」は店頭受付と処方せん事前受付の順番を統合管理できる機能で、どちらも待ち状況をリアルタイムに確認することやお薬が準備できたことを通知することができます。待ち時間の確認にLINEミニアプリを使用することで、デジタルサービスを利用したことがない患者さんを自然にLINEの友だちへ促すことが可能です。この取り組みで友だち追加の割合が5%向上しています。
── 御社のサービスにおいてLINEが重要な役割を果たしているわけですね。
吉野:はい。LINE公式アカウントおよびLINEミニアプリの導入に注力している点は、今では私たちの強みになっていると考えてます。私たちはただ患者をデジタル化するだけでなく、自社管理の接点に患者を囲い込むことで顧客基盤を作っていくことが重要だと考えております。集客し、獲得した患者を囲い込んでいくためにLINE活用は最適なプラットフォームだと感じております。
3. 薬局・ドラッグストアのLINE運用について
── 薬局・ドラッグストアがLINEを使う価値について御社はどのように捉えていますか?
吉野:幅広い年代で利用しやすいことだと考えております。調剤薬局のメイン層である年配層の利用も多く、どの世代もすでに日常で使用しているアプリであるため利用へのハードルが低いです。さらに、物販・調剤をLINEという1つの箱に入れられるので、両方の顧客に対してアプローチができるのも魅力です。例えば、調剤利用からのLINE友だちになってくれた方に物販のクーポン渡すなど、両方からの相互集客が可能になります。
廣瀬:また、先ほどお話しした「薬急便モバイルオーダー」と組み合わせることで、調剤利用をきっかけにLINEの友だちとしてデジタル接点を作ることができます。
LINE公式アカウントにデジタル接点を集約することで、先ほどのクーポン配布もそうですし、目的に応じたセグメントに対してメッセージ配信を行うなど、顧客と継続的なコミュニケーションが図れるようになります。このようなLINEを通じた施策によって、関係性を構築することで顧客をロイヤルカスタマー化できるのもLINEを使う価値に繋がると思います。
── 御社にご相談にくるお客様からはどのような要望が多いですか?
廣瀬:新患獲得率・継続利用率のどちらも期待されているお声をよく聞きます。LINE友だちとして集客できた患者をいかに囲い込むことができるかが重要なポイントだと考えております。
──お客様はLINEに対してどんなことを期待されているのでしょうか?
吉野:手軽さと網羅性だと考えております。簡単に始めることができる上に必要な機能を網羅できていれば導入しない手はないはずです。
4. LINE運用で悩む企業へメッセージ
── 最後に、LINE運用で悩む企業へメッセージをお願いします。
吉野・廣瀬:これからはつながり勝負になるため、LINE導入の際には自社の資産となり、個人情報保護された形でのサービス提供を念頭に検討すべきだと考えています。例えば、チャットでの直接のやりとりですと、個人情報が保護されず、自社の資産にならないという観点からあまり推奨できません。上記の点に注意しながらLINE上で独自の顧客接点を築き上げていくことが、薬局やドラッグストアのLINE運用において最も重要だと考えます。
──ありがとうございました!
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