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クレッシェンド・ラボ製品発表会 2026 レポート:AIエージェントを事業成果につなげる「Intelligence in One Touch」

Nari Fujiie

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クレッシェンドラボは、年次プロダクト発表会「Crescendo Lab Product Launch 2026」を台湾・台北にて開催しました。今回のテーマは「Intelligence in One Touch」で、AIを一部の担当者が使う効率化ツールにとどめず、企業の業務プロセスに組み込んで事業成果につなげるための構想とプロダクトを発表しています。

当日は、マーケティング・セールス・カスタマーサポートを支援する「CL Agent Platform」と、複数のAIエージェントを企業全体で管理する「Crescendo Agent Lab」を中心に紹介し、後半では導入企業3社による活用事例と、AI導入・データ活用・ガバナンスをテーマにしたパネルディスカッションが行われました。本記事では、当日の主な発表内容を順に紹介しながら、企業がAIエージェントを導入する際に押さえておきたいポイントを整理します。

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この記事の要点

  • AIを事業成果につなげるには、企業固有のデータや業務フローとの接続が欠かせない
  • 「CL Agent Platform」は、マーケティング、セールス・カスタマーサポート、データの3領域を横断して業務を支援
  • 「Crescendo Agent Lab」は、複数のAIエージェントの権限や実行範囲、承認条件を一元管理する
  • 導入企業からは、購入CVR約6倍、対応時間を15〜60分から約3分へ短縮した事例が紹介

AIを「水のように」使える世界へ

発表会の冒頭、クレッシェンドラボCEOのジンが紹介したのは、パナソニック創業者・松下幸之助氏の「水道哲学」でした。水道の水のように、誰もが必要なときに無理なく使えるものにすることで人々の生活を豊かにする—この考え方をAIに重ね、「AIを、水のように誰でも簡単に利用できる世界をつくりたい」というビジョンを示しています。

AIは急速に進化していますが、企業のなかで実際に活用できているのは一部の担当者に限られるケースも少なくありません。専門知識や複雑な準備を必要とせず、日常業務のなかで自然に使える状態になって初めて、AIは組織全体の成果につながります。今回発表したAIエージェント基盤は、AIを「使いこなすためのツール」から「業務のなかで継続的に働く存在」へ変えていくためのものです。

【基調講演スライド「水道哲学」】

【CEO シュエ・ジン(薛覲 / Jin Hsueh)登壇時】

台湾発のAIエージェント基盤

私たちが拠点を置く台湾は、半導体を軸に高い成長を続けており、AIの活用でもソフトウェアからハードウェアまでが一つのエコシステムとして動いています。この環境は開発と検証のスピードを支える基盤になっています。

台湾経済は、AI関連需要を背景に高い成長率を記録しています。2025年の経済成長率は8.63%と過去15年で最高となり、2026年に入ってからも1〜3月期は13.69%、4〜6月期は12.92%と二桁成長が続いています。通年でも二桁に迫る、あるいは二桁に達するとの見通しが各機関から示されています。
この成長を牽引しているのがAI関連の輸出です。半導体の設計・製造から、サーバー、ネットワーク機器、周辺部材までが国内に集積しているため、AIの需要がハードウェアの生産と輸出に直結します。

台湾ではLINEをはじめとするメッセージングアプリが生活に浸透しており、小売、EC、金融、教育など幅広い業種が、日常的に顧客とチャットでやり取りしています。日本と共通する部分が多い環境で、AIエージェントを実際の業務に組み込んだ検証を積み重ねられることは、製品開発において大きな意味を持ちます。

本記事の後半で紹介する導入事例も、こうした環境のなかで生まれたものです。日本企業が同様の課題に取り組む際の参考として、あわせてご覧いただければ幸いです。

AIで作業が速くなっても、事業成果が伸びない理由

AIを活用すれば、文章作成や情報整理、クリエイティブ制作などの作業時間は確実に短縮できます。しかし、個々の作業が速くなっただけでは、必ずしも売上やCVR、顧客満足度の向上につながるとは限りません。たとえばマーケティングでは、AIで多くのクリエイティブを作成できたとしても、「誰に、何を、いつ、どのチャネルで届けるか」を担当者が毎回ゼロから判断していれば、施策の量が増えるだけに終わってしまう可能性があります。AIが企業固有のデータや業務フローから切り離されていると、作業が速くなっても、意思決定と業務プロセスにつながらなければ成果は動きません。成果を左右しているのは制作のスピードではなく、その手前にある意思決定だからです。

セールスやカスタマーサポートでも状況は同じです。広告の流入元、Webサイトの閲覧履歴、過去の会話、購買履歴などが複数のシステムに分散していれば、担当者は対応のたびに情報を探し直さなければならず、AIが支援できる範囲も自然と限られます。文面の作成だけをAIに任せても、その前後にある確認作業が残り続けるためです。

今回の発表会では、クレッシェンドラボのプラットフォーム上で発生した175ブランド・約65万6,000件の会話を分析した結果も紹介されました。そのうち45.3%は営業時間外または週末に発生しており、顧客が問い合わせをしたいタイミングと、企業が対応できるタイミングが半分近くずれていることになります。さらにカスタマーサポートでは、顧客ニーズの把握、CRMの照会、商品情報の検索、社内確認などを含めると1件の対応に15〜60分かかるケースがあることも示されました。一次対応の遅れがそのまま機会損失につながる構造が、数値として可視化されました。

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【台湾プロダクトチーム責任者 Peter Su登壇時】

こうした課題を踏まえ、AIを事業成果につなげるための要素は次のように整理されました。

AIの知能 + 企業固有の文脈 + 業務フロー + 安定した実行 = 事業成果

ここでいう「企業固有の文脈」には、顧客情報、購買履歴、在庫、実施中の施策、社内ルールなどが含まれ、「業務フロー」は問い合わせを受けてから回答するまでの手順や、参照すべきシステム、承認が必要な条件を指します。そして「安定した実行」は、一度うまくいった処理を、担当者が見ていないときも同じ品質で繰り返せる状態を意味します。

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重要なのは、この4つが掛け算ではなく足し算で並んでいる点です。どれか1つが突出していても、他が欠けていれば成果には届きません。高性能なモデルを導入しても社内データにつながっていなければ判断材料がなく、データが整っていても承認プロセスに組み込まれていなければ実行に移らないためです。これらをAIに接続することで、単に質問へ回答するだけでなく、実際の業務に沿って次の行動を提案・実行できるようになります。

比較項目

一般的な生成AI

AIエージェント

情報の参照

必要な情報を人が都度入力

企業データやルールを継続的に参照

主な役割

文章や分析結果の案を提示

業務に沿った対応を提案・実行

ナレッジ

個人の活用ノウハウとして蓄積

組織の知識やルールとして活用

主な評価指標

作業時間の短縮

売上、CVR、対応時間などの事業成果

企業のAI活用とオムニチャネル戦略の基本的な考え方は、弊社独自のeBookダウンロード資料でも解説しています。

発表1:業務にAIエージェントを組み込む「CL Agent Platform」

第1部の中心となった発表が「CL Agent Platform」です。既存のSaaSにAI機能を追加するのではなく、AIエージェントを企業の業務フローそのものに組み込むという方向性が示されました。

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多くのSaaSでは、AIは既存機能の横に置かれた補助機能として提供されます。これに対してCL Agent Platformが前提としているのは、AIエージェントが業務フローの内側で動き、必要なデータを自ら参照しながら次のアクションまで担うという構造です。担当者の役割は、AIに指示を出すことから、AIが提示した案を確認して判断することへ移ります。

CL Agent Platformでは、次の3領域を支援するAIエージェントが、企業固有のデータ、業務フロー、ガバナンスを共有しながら連携します。

  • マーケティング領域(MAAC:顧客データをもとに、配信対象、コンテンツ、タイミング、チャネルを含むキャンペーン設計を支援
  • セールス・カスタマーサポート領域(CAAC:広告流入後の会話開始から、問い合わせ対応、商談化、サポート業務までを支援
  • データ領域(DAAC:購買、広告、検索、会話、顧客行動などのデータを統合し、AIエージェントが参照する顧客プロファイルの構築を支援

3つが独立したツールとして並んでいるのではなく、同じ顧客プロファイルと同じ業務ルールを共有している点が特徴です。マーケティングが抽出した顧客像がそのままセールスの対応に引き継がれ、その会話で得られた情報が再びデータ領域に戻る、という循環を想定しています。

顧客データを、次のアクションにつなげる

データ領域では、主に「顧客との関係性」「ニーズを示すシグナル」「行動のタイミング」という3つの観点から情報を整理します。会員情報や購買履歴といった静的なデータに加え、検索意図、会話内容、カート内の動きなどを組み合わせることで顧客の状況を立体的に捉え、次に取るべきアクションの判断に活用します。

従来の顧客管理では、「誰が何を買ったか」という実績データが中心でした。これに「いま何に関心を持っているか」「どのタイミングなら反応しやすいか」を重ねることで、施策の対象を過去の購買履歴だけで決めずに済むようになります。発表会で紹介された導入事例でも、この違いが成果の差として現れていました。

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施策の学びを「Brand Playbook」として蓄積

マーケティング領域では、施策から得られた学びを「Brand Playbook」として蓄積する仕組みも紹介されました。反応の良かった顧客層や訴求内容を組織の知見として残し、次の施策設計に活用するもので、担当者個人の経験に依存しやすいマーケティングのノウハウを再利用可能な資産へ変える考え方です。

実行 → 効果検証 → 学習 → Playbookへの蓄積 → 次の施策

この仕組みが意味を持つのは、多くの企業でキャンペーンの振り返りが担当者の記憶や個別のレポートに留まっているためです。担当者の異動や退職で判断基準が失われる、あるいは似た施策を毎回ゼロから設計し直すといった状態を避け、施策を重ねるほど提案の精度が上がる構造をつくることが狙いです。

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マーケティング業務での具体的な活用方法は、[MAAC製品ページ(リンク設定)]でも紹介しています。

広告から会話へつなぐ「Ads-to-Chat」

セールス領域では、広告をクリックしたユーザーをLINEやWhatsAppの会話へ直接誘導する「Ads-to-Chat」も発表されました。

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従来の導線では、広告をクリックしたユーザーはランディングページへ遷移し、フォームを入力して初めて企業側と接点が生まれます。この間に離脱が起こりやすく、フォーム送信から担当者の連絡までに時間が空くことも少なくありません。

Ads-to-Chatではフォームやランディングページを介さないため、関心がもっとも高いタイミングでそのまま会話を始められます。さらに、商談や購入などのコンバージョン情報を広告プラットフォームへ連携することで、クリック数だけでなく、実際の成果につながった広告やクリエイティブを分析できるようになります。広告の評価軸を「何クリック獲得したか」から「何件の商談につながったか」へ移せる点が、この機能のもう一つの意味です。

対応する広告媒体やメッセージングチャネル、外部サービスとの連携範囲は、[チャネル・連携一覧(リンク設定)]をご覧ください。

発表2:複数のAIエージェントを管理する「Crescendo Agent Lab」

今回の発表でもう一つの柱となったのが、社内で稼働する複数のAIエージェントを企業全体で管理する基盤「Crescendo Agent Lab」です。

AIエージェントの活用範囲がマーケティング、セールス、カスタマーサポートから財務、人事、情報システムへ広がると、社内で稼働するAIエージェントの数も増えていきます。部門ごとに個別に導入が進むと、どの部門がどのデータを扱っているのか把握できなくなり、管理の負荷とリスクが同時に高まります。その際に必要になるのが、データへのアクセス権限や実行可能な操作、人による承認が必要な条件を、全社共通のルールで管理する仕組みです。Agent Labでは、主に次の4点を明確にします。

  • 誰がAIエージェントを利用しているか
  • どのデータへアクセスできるか
  • どの操作を実行できるか
  • どの段階で人の確認・承認が必要か

この考え方は、クレッシェンドラボ社内での運用経験をもとにしています。社内の分析用AIエージェントでは、利用が進むにつれて質問の内容が「数値を調べる」ものから「なぜその結果になったのか」「次に何をすべきか」といった分析・提案型へ変化し、現在では複雑な分析に関する質問が60%以上を占めるようになりました。使い始めの段階では検索の代替として使われていたものが、定着すると判断の相談相手に変わっていくという推移です。

また、クレッシェンド・ラボ内で活用している資料作成やチケット作成を担う社内AIエージェントでは、月額約5,000米ドルの運用コストに対して約15,000米ドル相当の人件費削減効果が生まれ、投資対効果は2.9倍と報告されています。

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一方で、財務数値など推測が許されない領域やリスクの高い業務では、人による確認を必須にする必要があります。どこまでをAIに任せ、どこから人が確認するのかという線引きを最初に決めておくことが、運用を続けるうえでの前提になります。

コストを適切に保つうえでも、すべての処理に同じAIモデルを使うのではなく、業務の難易度やデータの機密性に応じて使い分けることが重要です。

業務の種類

モデル選定の考え方

複雑な判断・分析

高性能モデルを使用

定型的で単純な処理

軽量モデルを使用

機密情報を扱う処理

プライベート環境またはオンプレミスのモデルを検討

各部門が柔軟にAIエージェントを開発・活用できる環境を整えながら、セキュリティや権限は企業全体で統制する。この両立がAgent Labの基本的な考え方であり、AI活用を一部の先行部門にとどめず全社へ広げていくための条件でもあります。

導入企業3社が紹介したAIエージェントの活用事例

第2部では、マーケティング、セールス、カスタマーサポートの各領域から3社が登壇し、実際の活用方法と成果を紹介しました。

企業

活用領域

主な成果

全聯電商(PX Mart EC部門)

マーケティング

3施策全体で購入CVR約6倍、受信者1人あたり売上約400%増

聯成電脳

セールス

広告からLINEの会話へ直接誘導し、営業時間外の一次対応を自動化

Move Free

カスタマーサポート

15〜60分かかっていた対応プロセスを約3分に短縮

全聯電商:値引きに頼らず、購入意欲の高い顧客を発見

台湾最大手のスーパーマーケットチェーン「全聯福利中心(PX Mart)」のEC部門では、七夕、中元節、新学期の3つのキャンペーンでマーケティング領域のAIエージェントを活用しました。小売やECの繁忙期は施策が集中するため、対象者の選定にかけられる時間が限られ、結果として値引き幅で反応を取りにいく判断になりやすい領域です。

七夕キャンペーンではAIエージェントが購入意欲の高い顧客層を抽出し、購入者の75%が、それまで購入経験のなかったカテゴリーの商品を初めて購入しています。中元節のキャンペーンでは値引き率を高めるのではなく購入可能性の高い顧客を特定するアプローチを採用し、注文者の66%が対象商品の新規購入者となりました。新学期キャンペーンでは、従来想定していなかった顧客層を発見したほか、同日に配信する別施策との対象者の重複も事前に検知し、CTRは過去平均と比べて71%向上しています。

3つのキャンペーン全体では、過去施策と比較して次の成果が報告されました。

指標

過去施策との比較

CTR

約1.5倍

購入CVR

約6倍

受信者1人あたりの売上

約400%増

全聯PX Mart EC部門のParis Lo氏は「求めているのは、単なる業務の自動化ではありません。過去のECデータとAI分析を組み合わせ、人の目では見つけにくかった機会をAIエージェントが先回りして発見する。そこまでできて初めて、AIはマーケティングの意思決定に本当の価値をもたらします」と説明しました。

聯成電脳:広告をクリックしたユーザーと、その場で会話を開始

台湾の大手PC・ITスクール「聯成電脳」は、Google広告からWebサイトへ誘導する従来の導線を見直し、広告からLINEの会話へ直接つなぐ仕組みを導入しました。スクール事業では、資料請求や体験予約までの検討期間が比較的短く、問い合わせのタイミングを逃すと他社へ流れやすいという特性があります。

ユーザーがLINEへ移動すると相談内容に応じた開始メッセージが表示され、AIエージェントが広告の内容を踏まえて対応します。営業時間外はAIエージェントがニーズをヒアリングし、翌営業日に担当者が整理された情報をもとに対応を引き継ぐ流れです。担当者は一から状況を聞き直す必要がなく、最初の会話で得られた情報を前提に提案へ進めます。

同社のマーケティング責任者Leo氏は、「早い段階で顧客との接点を持つほど、成約率は高まります。入会の可能性を予測するうえで重要なのは、どれだけ早く対応できたかです。最初の3〜5日以内に予約した方は、それ以降に予約した方よりも高い確率で成約しています」と説明しました。

Move Free:回答生成にとどまらず、対応プロセス全体を効率化

関節ケアサプリメントブランド「Move Free」が目指したのは、質問へ回答するだけのチャットボットではなく、ブランド方針、商品知識、関連規制、社内の業務フローを踏まえて対応できるAIエージェントでした。健康食品は表現に関する規制があるため、回答の速さだけでなく、その内容が社内基準と規制の両方を満たしているかが問われる領域です。

商品を提案する際には顧客の状況を把握し、ナレッジを検索したうえでコンプライアンス上の問題がないかを確認します。従来は人手で15〜60分かかっていた一連のプロセスを、約3分まで短縮できたと報告されました。短縮されたのは回答を書く時間ではなく、その前後にあった確認と調整の時間です。

ナレッジに回答がない場合は、不足している情報を検知して更新案を提示し、人が内容を承認した後に反映します。日々の対応を重ねるほど回答品質が改善していく設計です。

3社に共通しているのは、AIに任せた範囲が「文章を作る」ことではなく、「判断に必要な情報を集め、業務のルールに沿って次の行動を用意する」ことだった点です。成果として報告された数値も、作業時間ではなくCVRや対応完了までの時間といった事業側の指標で示されています。

パネルディスカッション:AI導入を全社へ広げるための4つの論点

第2部後半のパネルディスカッションでは、ECプラットフォームを提供するSHOPLINEをはじめとする外部パートナーを交え、AI導入の進め方、ファーストパーティデータ、データ基盤、オンラインとオフラインの体験設計という4つのテーマが議論されました。事業会社だけでなく、EC基盤やデータ基盤を提供する立場からの視点が加わることで、AI活用を支える環境そのものをどう整えるかという論点まで踏み込んだ議論になりました。

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1. 導入は「AI Ready」「Data Ready」「Governance」の順に(対象業務、データ、ガバナンスの順に設計)

AI導入ではまず対象業務と解決したい課題を明確にし、次に必要なデータを整理したうえで、アクセス権限や承認ルールを設計することが重要だという点で認識が一致しました。ツールの導入を先行させても、参照すべきデータや業務ルールが整っていなければ担当者が毎回情報を集め直すことになり、十分な効果は得られません。

この順序が崩れると、「導入したが使われない」状態になりやすくなります。目的が定まらないまま全社展開を始めると評価の基準がつくれず、投資の継続判断もできなくなるためです。また導入を定着させるには、現場が実際にAIを使いながら活用方法を見つけるボトムアップの取り組みと、共通の業務フローやセキュリティ基準を整えるトップダウンの取り組みを、並行して進める必要があるという意見も出ました。

2. ファーストパーティデータが競争力の差になる

多くの企業が同じ基盤モデルを利用できる時代には、各社固有の顧客データ、ナレッジ、業務フローが競争力の源泉になります。モデルの性能そのものは他社も同様に手に入れられる一方、自社の顧客との関係のなかで蓄積されたデータは他社が複製できないためです。

ただし、LINE、Web、広告、店舗などの接点を増やすだけでは顧客データは資産になりません。チャネルごとにデータが分かれたままでは、同じ顧客を別人として扱ってしまい、施策の精度はむしろ落ちます。「誰が、何に関心を持ち、どのような会話や行動をしたか」を一貫して蓄積し、施策や顧客対応へつなげる仕組みが不可欠です。

3. データ基盤は要件に応じて選ぶ

データ基盤は、扱う情報の機密性、規制、拡張性などを踏まえ、クラウド、オンプレミス、ハイブリッドのなかから選択するという整理が示されました。すべてを一つの方式にそろえる必要はなく、業務や扱うデータの性質に応じて組み合わせる判断が現実的です。

選択肢

主な特徴

クラウド

最新モデルを利用しやすく、拡張性が高い

オンプレミス

規制対象データや機密情報を管理しやすい

ハイブリッド

機密性を保ちながら、クラウドの分析機能も活用しやすい

4. オンラインとオフラインの強みを、データでつなぐ

店舗は体験価値に、オンラインはスピードや利便性に強みがあります。両者をまったく同じ体験にそろえるのではなく、それぞれの特性を生かしながら、顧客データによって一貫した体験としてつなぐことが重要だという考え方が共有されました。

つなぐ対象は体験の見た目ではなく、顧客の情報です。店舗で相談した内容がオンラインでの提案に反映され、オンラインでの検討履歴が来店時の接客に活かされる状態をつくれれば、チャネルごとの強みを残したまま一貫性を担保できます。

製品発表会で示した、企業のAI活用の次の段階

今回の発表会で示されたのは、AIを個人の生産性向上ツールから、組織全体の業務を支える基盤へ発展させる方向性です。クレッシェンドラボは、これまでの発表を次の3段階で整理しています。

段階

テーマ

主な問い

Q1

データ基盤

分散したデータを、どのように統合された顧客プロファイルへ変えるか

Q2

AIの思考基盤

AIエージェントが判断するための文脈を、どのように提供するか

Q3

AIエージェント基盤

判断できるAIエージェントを、どのように企業全体の業務へ組み込むか

この3段階は積み上げの関係にあります。データが統合されていなければ判断の材料がそろわず、判断の文脈が与えられていなければ業務に組み込んでも精度が上がりません。今回のQ3は、前の2段階で整えてきたものを実際の業務プロセスへ接続する段階にあたります。

今後は、各部門のAIエージェントが個別に動くだけでなく、部門を越えて連携する状態を目指します。マーケティングが見つけた見込み顧客の情報がセールスのAIエージェントへ引き継がれ、その商談結果がまたマーケティングの施策設計へ戻るといった連携です。その実現には、データ統合、業務フローへの接続、ガバナンスの3つを並行して整備することが欠かせません。

まとめ

AIエージェントを成果につなげるうえで重要なのは、AIモデルの性能だけではありません。自社のデータや業務ルールを参照できる状態を整え、AIが実行する範囲と人が確認・承認する範囲を明確にすることが、導入の前提になります。今回登壇した3社の事例も、特別なモデルを使ったというより、AIが判断できる材料と手順を業務のなかに用意した結果として成果が生まれていました。

まずは「必要な情報が複数のシステムに分散している」「部門間の引き継ぎに時間がかかる」「担当者が同じ確認作業を繰り返している」といった業務課題を洗い出すことから始めてみてください。こうした課題は、AIを導入する前から存在していたものであり、AIエージェントはそれを解消するための手段として機能します。

AI x オムニチャネル戦略の基本を知りたい方、自社に適した導入シナリオを検討したい方は、お問い合わせからお気軽にご相談ください。引き続き、企業の顧客コミュニケーションの課題解決をテクノロジーを活用してご支援いたします。

よくあるご質問

クレッシェンド・ラボ製品発表会では何が発表されましたか?

マーケティング、セールス・カスタマーサポート、データの3領域を支援する「CL Agent Platform」と、複数のAIエージェントの権限や実行範囲を企業全体で管理する「Crescendo Agent Lab」が発表されました。あわせて、広告から会話へ直接つなぐ「Ads-to-Chat」や、施策の学びを蓄積する「Brand Playbook」も紹介されています。

CL Agent PlatformとCrescendo Agent Labの違いは何ですか?

CL Agent Platformは、マーケティング、セールス・カスタマーサポート、データの各領域で業務を支援するAIエージェント群とその共通基盤です。これに対してCrescendo Agent Labは、社内で稼働する複数のAIエージェントについて、利用者、アクセス可能なデータ、実行できる操作、人による承認条件を一元管理する仕組みを指します。

発表会では、どのような導入成果が紹介されましたか?

マーケティングでは、3つのキャンペーン全体で購入CVRが過去施策比約6倍、受信者1人あたりの売上が約400%増となった事例が紹介されました。セールスでは営業時間外の一次対応を自動化した事例、カスタマーサポートでは15〜60分かかっていた対応プロセスを約3分まで短縮した事例が報告されています。

AIエージェントにガバナンスが必要なのはなぜですか?

企業で利用するAIエージェントは、複数のシステムやデータへアクセスし、業務上の処理を実行する場合があるためです。利用者、アクセス可能なデータ、実行できる操作、人による承認が必要な条件を明確にすることで、安全性と説明責任を確保できます。

AIエージェントの導入は何から始めるべきですか?

まずは対象業務と解決したい課題を明確にすることから始めます。次にその業務に必要なデータを整理し、最後にAIが参照・実行できる範囲と、人による確認・承認が必要な条件を設計するという順序が推奨されました。